2013・10・30 忍野八海




10月に台風が毎週来襲した関係で写真工房撮影講座が延び延びとなっていました。遠征場所の忍野八海は富士山を背景に出来る絶好の撮影ポイントですから是非とも晴れて欲しかったので、天気予報と出発時の晴れが我々の前途を照らしているかの様でした。

往路中央道でも見事な富士山が車窓から見え撮影意欲満々の生徒さんと私でしたが、雲が微妙に富士山方向だけにかかる意地悪な天気です。これも私の日頃の行いが微妙なのでしょうか? 微妙ってどんな行いかは知りません。それほど微妙です。

とりあえず晴れですので、記念すべき撮影講座のスタートです! お天気男の真骨頂です。(大笑)


忍野八海は富士の湧水の名勝地です。このような観光地の撮影ポイントの基本は「絵ハガキ」を見るです。どんな撮影ポイントがあるのかは初めての場所で見つけることは大変です。ブログやホームページで検索するのも良いですが、プロの撮る「絵ハガキ」を見ることが撮影ポイント選択の早道です。まずは、お土産物屋等で見て下さい。またはポスターでも可能です。その撮影ポイントを押えること!

そこで画像(上左)を見てみましょう。お約束の「池と富士山」を縦位置で撮影しています。雲が無ければ合格!って感じですが、あるものは仕方ありません。構図としては池を大きく写しています。それは空に雲が多いため空の広がりを撮るより池の青さに重心をおいたためです。しかし、富士山がはっきり見えた写真には敵いません。次回に期待しましょう。(苦笑)      (F11・ 1/160 ・ISO200)

さらに次(上右)を見てみると、収穫の秋を象徴するかのようにトウモロコシが下がっています。普通に撮ると外の明るい空などに露出を合わせるので軒下のトウモロコシは暗くシルエットになってしまうでしょう。それは順光部分と逆光や影の光量との差によるものです。日向と日陰では2〜3EV程度光の強さが違います。したがって、普通に撮ると手前が真っ暗になるのは当然の減少です。

それでは軒下に露出を合わせるとその逆に空や家は真っ白く飛んでしまいます。それを防ぐ為に内臓ストロボを焚きました。そうすれば手前も明るくなり自然な感じに撮ることが出来ます。内臓ストロボがない機種でも専用ストロボが別売りで市販されています。ストロボは室内や人物を撮るなど色々な場面で多用しますのであると大変便利です。    (F7.1・1/320・ ISO200)


生徒の皆さんのご要望で低速シャッターの練習です。本来は三脚を使用して撮影しますが、今回は手持ちで挑戦しました。そういえば観光地に付き物の写真オジサンの三脚の放列が無かったですね。三脚禁止なのでしょうか? 立て札は無かったような・・。観光客が多い場所での三脚使用は迷惑行為になりますので気を付けましょう。

と言うことで、水車の回転を低速で撮ります。シャッタースピードは1/2秒です。見事にブレブレです。手持ちなのでそこは置いといて、水が点から線になり綿のようになればOKです。それに水車自体もブレています。さらに三脚を使用しますと動体はブレて他は固定しますので写真の中にも「動き」が出てきます。三脚持込が可能な場所で試してみましょう。

ご要望の多い渓流や滝を綿状に写す技法に挑戦します。今回は日陰の水路を被写体にします。なぜ日陰かというと、低速シャッターを切るためには低感度(ISO100)と絞り込む(F22)ことで低速が切れます。しかし、順光条件の明るい場所では低感度、絞り込んでも低速では切れない程明るいのです。そのため日陰や曇天など暗い場所が適地になります。どうしても明るい場所の滝などを低速で撮りたい場合は、NDフィルターを使用します。これは光量を抑制する黒いフィルターです。このフィルターを使用して低速シャッターを実現します。

それでは本題、水流が激しいところでは1/8秒でもブレます。水流の無い場所では1秒以上必要な場合もあります。水流でシャッタースピードを考慮することをお忘れなく!デジカメは撮ってすぐ確認出来るのが利点です。何枚も撮って、好みの低速具合で試してみましょう。


「風景を撮る」講座ですので、学問的考察でもしましょう。同じ状況と条件下で、どう切り抜くかの考察です。上の画像はほぼ同じ場所から水車小屋をメインに紅葉と庭を撮ったカットです。

それでは解説しましょう。左カットは池をメインに下半分と上半分の境界を中央水平線にした構図です。そして水車小屋を右に配し池とのバランスを考えました。メインの被写体を真ん中に配置する日の丸構図は避けましょう。窮屈に見えますよ。また、紅葉は全体を狙うには順光で、アップで紅葉を狙う場合は逆光がきれいに撮れますよ。

右カットは水車小屋を左に配し、空の青さを強調しています。こちらの方がスッキリした構図です。手前の植樹を避け、水面だけにして広がりはこちらでしょうか? ただし紅葉した高木が右端にあればさらに良いのではないでしょうか。さらに紅葉の木々をどこに持ってくるか(背景か手前か)など考えて撮りましょう。

このように同じ風景でも撮り方で見え方が変わります。いろいろな状況で変えて撮ることも写真を撮る楽しみです。



次は忍野八海から山中湖に移動して「山中湖からの富士山」を狙いました。山中湖から雄大な霊峰富士を撮影するのは実に気持ちが良いものです。天気は良いですけど富士山は雲が出るので有名です。何しろ日本一の単独峰で風が強いので仕方ありません。

また、撮影する場所が決まりましたら事前に下調べしましょう。午前中が良いのか午後かは方角を見て判断します。せっかく行っても逆光で真っ暗だったなどは下調べ不足です。



山中湖の平野地区からは富士山の夕陽が有名です。

夕陽は日没時間よりも30分ほど後に訪れるマジックアワーを撮影しましょう。赤から青に変わり、群青から漆黒に変わる空と霊峰富士を撮影しましょう。

以前のフィルム時代では、CCフィルター(色補正フィルター)やらPLフィルターを駆使して色を出していましたが、デジカメは簡単にそれが出来ます。事前にホワイトバランスを調整して撮影しましょう。

つまり、日中の空は色温度が7000〜12000Kと青くなるが、夕陽になると2000Kまで落ちて赤くなる。それをホワイトバランス設定が「太陽」だったらどうなるか?

カメラメーカーは日中の色温度を5000〜6000Kに調整されています。つまり、通常の「太陽」設定では、この温度より高い色温度の空は青く、低いものは赤く写し出される訳です。
この理屈分かりますでしょうか?


例えば、6000Kと10000Kでは4000Kの差です。この差が大きいほど色の変化が起きますので、あえて差をつければお好みの色になるはずです。

夕陽をより赤く幻想的にするには、ホワイトバランスの設定を高くすることです。仮に2000Kの夕陽を10000Kに設定したカメラで撮ると8000Kの差となり、より赤くなるのです。青くしたいのであればその逆をすればいいのです。


今回の画像はRAWで撮影したものを現像時に色調整したもので実際には、このような色ではありません。でも写真はそれで良いんです。

忠実な写真を要求する報道写真や精巧で緻密な再現を要求する建築写真ではなく、もっと自由な心象心理から見た富士山の印象を表現するのですから。

では、次回も一緒に楽しみましょう!

参加された生徒さんは、掲示板に今回の1番を貼って下さいね。