久々の第4弾になりましたポートレート撮影講座です。
今回は「
より美しく、より可愛く、よりビューティーに!」をテーマに進めます!

ご承知の通り この講座で使用しております 画像、テキストは著作権を笹生和義が保持しております。
またモデルさんには肖像権があります旨をご理解下さい。よって
2次使用、無断使用を禁じます
2005.10



ポートレート撮影講座も第3弾から1年以上経過してしまいましたが決してサボっていたのではなく吟味に吟味を重ねていたからです。
そんなことはほっといて先に進めます。前回はストロボでの簡単なライティングでの撮影を説明しましたが(vol,3参照)、今回は最も撮影頻度が高く、また費用が掛からない自然光下での撮影です。プロ用ではなく、より現実的な撮影を心掛けました。

ではでは・・・ 撮影に最も適した天気と言うのはどんな天気でしょうか? 雲一つ無い日本晴れ、雲は多少あるがまずまずの花曇り、今にも雨が降りそうな曇天、シトシト降る雨天? 答えは「撮影目的で決まる」が正解です。「なんじゃ、それ!」と言いたい方々多数いるでしょうが目的別で良いんです。季節感を出したくコントラストをあげるにはピーカンの晴天が良いし、叙情的風景でしたら曇天でいいのです。観光ポスターなどでは晴天と決まっているので、撮影では天気待ちをよくします。ではではアマチュアがポートレートで失敗しない天気とは、それは 「明るい曇天か、雲の多い晴れ」が良いでしょう。その理由として陰影が付きにくい、コントラストが低いからです。それがなぜ良いのかは・・・これからお話いたします。

今回掲載の撮影はいわゆる「花曇り」状態の天気で行いました。上の写真から解説しますとレフ板や日中シンクロを使用しないで、モデルとリラックスした環境で撮影したかった場合はこの天気なんです。なぜなら助手でもいればレフ板で起す手もありますが、そのような撮影になりますと公共の公園などでは撮影許可が必要になります。写真クラブなど多数で撮影する場合も同じです。個人的かつモデルさんも素人の場合はそれ自体で舞い上がってしまうでしょう。大袈裟にしないで短時間で撮影し、場所移動するには、この天気が良いのです。

では作例の解説です。左右の違いは以前(vol.1参照)述べた背景の水平線の位置の違いです。芝生の量で分かると思いますが右は頭部の背景を空にしました。左は遠景の木々にしました。同じ様な写真ですがイメージが違うと思いませんか?また、意図的に試みましたのが体を斜に構えて、意識的に胸を張って頂いたのですがお分かりですか? 胸を張る際に背筋に力を入れますので、ただ立っているのとは違う豊かな曲線が生まれます。これが女性を撮影する上で重要なポイントになります。胸が大きく見えたり、痩せて見えるのもポーズ一つで決まるのです。正面からではよっぽどのプロポーションの持ち主でないとすっきりとはいきません。まずはポーズを一工夫しましょう。
ただし、やってはいけない事に、いわゆる「モデル立ち」の真似をしている方がいます。片足を前に出せば良いってもんじゃないです!前に出し過ぎると姿勢が悪く、足も短く見えます。2本足を1本半程度に魅せる位の感じでそっと前に出すのが肝要です。

空全体に薄い層雲が広がり、時折直射日光が射す陽気。それが春の桜の時期に多いので花曇りと称します。直射日光が雲を透過して舞い降りますので天然のディフィーズ効果が期待出来るのです。透過光の利点はコントラストを下げることです。つまりは陰影を和らげる効果があり、特に女性のポートレートでは極めて重要です。
また、商品撮影(ファッション系)では商品の色と質感の再現が忠実に行われなくてはいけないので直射日光で強力なレフ板を用いた撮影になります。これは撮影フィルムがデーライトタイプを使用していたために色温度が5300から5600度で色再現がピークを迎えるためにこうなったものです。誰も来ないような草原でピーカンに撮影出来て、モデルがレフ板にも眩しい顔を見せない方でしたら実現できますが・・・。

撮影に適した天気とはいえ、スケジュールが優先しますのでベストな天気とはいかないでしょうが・・「全ては日頃の行い」と考えてください。
それでは下の作例の解説をいたします。2枚とも笑顔ですが、どこが違うか分かるでしょうか? よーく見ますと顔の向きが違うのです。
「はあー」って感じでしょうか?あごを引くか出すかの違いですが顔の大きさが変わるのです。顔自体が小さくなるのではなく小さく見えるのです。あごのラインや角度が3次元ではない2次元の写真で錯覚を起すのです。正面向きより斜に構えたり、足を交差するのも同じ効果を狙ったものです。これを知っているかいないかでモデルをより美しく撮影できるのです。



続きまして撮影をするまでをチビッと齧りましょう。(パクリっ) 内容は今回のページ相当を撮影する(35mm判)場合

撮影に用意する物: 

カメラボディー   2台 万一の故障のためサブカメラは必携。
レンズ  望遠系(200mm相当) 1本 単焦点レンズでもズームレンズでも構いません。あまり重くならず機動性を重視します。F値が小さい物ほど明るいレンズになり大きく重くなります。また、高価になりますので、お手持ちのレンズで随時調整して下さい。
      広角系(28mm相当) 1本
      標準系(50mm相当) 1本
三脚 1台 撮影を考えると重いがっしりしたものがいいのですが、機動性に乏しいので最低限の条件(レンズとカメラを乗せても動かない)を満たした三脚を携帯しましょう。カーボン製などは高価ですが良いです。
フィルム・メディア(CF/MD) 適宜 銀塩の場合は低感度を中心に20本程、高感度も5本ほどあると便利です。デジカメの場合は画素数・圧縮サイズにより変わります。今回の撮影規模なら1000枚撮影に対応するメディアを用意しましょう。
ストロボ 1台 カメラ内臓でも専用ストロボでも1台あると便利です。
簡易レフ・露出計・電池類 希望 レフと言っても携帯できる小さなサイズが市販されていますのであれば良い程度。露出計はカメラ内臓のもので構いませんが単体があればグッドです。今のカメラは電池やバッテリーがないと用を足しませんのでこれも予備を用意します。
雨具・タオル・ブロアー 必携 さっきまで晴れていても雨は降ってきますので必ず用意しましょう。タオルは汗拭きの他にも小雨の際にレンズを保護したり、カメラバックに入れるときに緩衝材としても使用できます。風はデジカメには大敵です。ブロアーで埃やゴミを取り除きましょう。1眼デジカメの場合はなるべくレンズ交換を少なくしてゴミの進入を防ぎましょう。
気合・根性 適当 非常に重要です。とにかくやる気がないと始まらない!



撮影道具をカメラバックに入れて、当日の天気も問題がないとなればモデルさんに電話して待ち合わせましょう。 集合場所でモデルさんを拾って撮影場所へ  撮影場所の選定はどうするの? どんな場所が撮影場所に適しているのか? 車でロケハンですか?

まずは広さがあること狭い公園や空き地では人目も気になりますし、背景選択で変化に乏しいです。樹木があり芝生があるなど背景をぼかしやすいなどがポイントです。広場と樹木が分離していて噴水や池などの人工物があるのも良い場所です。撮影で邪魔になる看板やけばけばしい人工物は避けましょう。また個人的撮影では観光客や見物人がわんさかいる寺院仏閣も避けた方が無難です。海や湖なども良いのですが非常に単純な海岸線だけより起伏に富んだ海岸などが良いでしょう。人工物でもヨットやクルーザーなどは背景にするのは良い例、悪い例は電柱や電線に生活感がありすぎの建物などは避けるのが無難です。絶対ダメではないので試行するのはご勝手に・・。

自宅から遠くても近くても構いませんがこれだけは憶えてください。ポジフィルムで撮影する場合はデーライトフィルムが忠実に色再現する色温度帯は午前9時から午後1時ごろまでです。(季節で変動) その時間を中心に活動しましょう。その前後は色温度が上下しますので青くなったり紅くなったりしますので注意してください。それを意図的に表現するのでしたらこの時間帯を選んで撮影して下さい。デジカメの場合は設定で微調整して下さい。撮影後にパソコンで画像処理をしましょう。

それでは上の作例の解説です。本日撮影開始の1枚が左になります。表情が固いのが浮き出てしまっています。プロじゃないので朝一からがんがんとはいきません。徐々にリラックスさせるのが肝要です。嫌なポーズや変なアングルは相互の誤解を招きますので厳重に慎むのは当然ですが、相互の理解で解決も出来ます(何を言いたいのか!)。 また、座って撮影する場合は周りの状況も周知して行います。作例のようにミニスカートの場合は特に注意して下さい。




上記2枚の似た構図の作例ですが何が違うかと言いますと光線(太陽光)ですね。上は曇天時で樹木の陰という設定。下は晴れの樹木の陰です。また、表情の違いは背景の設定と同調です。モデルさんの感覚ではなく意図的に曇天時は清楚、冷静な表情にしました。(して頂きました。) 曇天時は撮影意欲を削ぎますがパステル調に仕上げることが出来る利点もあります。「静」を表現する場合はこんな表現方法はいかがでしょうか? あくまでポートレート撮影で大事なのは被写体の人物でありますが、写す側の意図で撮影しませんと、それなりのスナップになってしまいますのでここが考える所です。被写体(モデル)をどう表現したいか、するのかが重要ですね。

一方、晴れでの撮影では飛び切りの笑顔を要求しまして撮影しました。2つの作例は同じ公園内のベンチを使用しておりますが場所を変えています(見れば分かる)。背景にも光線が当たっていますので肌色もよく出ています。樹木の下ですので直射日光でコントラストが上がるのを防いでいます。コントラストがあると陰影が強く、女性の顔に嫌な影を作るので好みません。そんなことを考慮して撮影場所を選ぶのも重要です。被写体(モデル)の持つ無限の可能性を探求して場所探しに勤しみましょう! 

ここでもう1個、撮影の際は露出をオートで撮影しないで露出計で測って撮影した方がいいのです。適当にカメラ任せですと同じシチュエーションで同じ仕上がりになりません。つまり、行き当たりばったりでは再現するのが難しいんです!まずは絞りですが、なるべく開放(F値)で撮影します。なぜなら背景(バック)がぼかしてモデルを浮き上がらせることが目的です。パンフォーカスのように全てにピントが合うとポイントが散漫になりモデルを引き立てることができないのです。ピントの場所は「目」に合わせます。目に合えば鼻の頭がピンボケでも差し支えありません。シャッタースピードはブレない速度が理想ですが、曇天などではブレる危険性がありますので三脚を使用しましょう。使用レンズでも速度を変えないといけません。35mm版ではレンズの焦点距離を分母にする速度以上が手持ちの限界と憶えましょう。たとえば100mmでは 1/125、200mmでは1/250となるわけです。それ以下の速度では三脚を使用となるわけです。また、感度はなるべく低く保ち粗くなるのを避けましょう。



撮影中は被写体であるモデルさんを盛り上げます。ひたすら持ち上げます。これでもかと持ち上げましょう。だって褒められて嫌な人はいませんから。 日頃から撮り慣れている方ならともかく、慣れないモデルさんから素晴らしい表情を頂くのですから頑張りましょう!
個人個人の最高の表情を感じるには時間が掛かります。2,3時間の撮影で良い表情を得られる確率はかなり低いものです。それを高めるのはリラックスした環境作りが大切です。もし皆様の恋人や友達を撮影するならば慣れている点で他人が撮るより良い結果が得られるでしょう。 巧みな言葉で緊張を解きますが、しかしモデルさんが不機嫌になるような言動は慎みましょう。 くれぐれもモデルさんが嫌がるポーズも厳禁です。過度な要求は犯罪ですから!

作例の解説に移りましょう。ベンチに座ってのカットですが2枚の違いは角度などもちろんあります。ベンチにもたれているかいないかで姿勢が変化することの作例です。左作例は立った姿勢と同じで斜に構えてこちらを向くポーズです。表情は申し分ない笑顔満面で良いのですが問題があります。 分かりますか? それは手先が写っていないのです。両方の手先が見えなくても問題はないが両方切るのは良くないです。また、腰から下の切り方が問題です。もう少し入れて安定感を出した方が良いのです。皆様、気を付けて下さい。

右の作例は一転して足を組んで変化を与えています。足を組むポーズで気を付けるのは広角レンズのデフォルメ効果です。手前にあるものほど誇張されて表現される訳ですから足が太く見えてしまうことです。これを避けたければ標準以上のレンズで撮影して下さい。レンズを換えると被写界深度、画角が変わるために背景のボケも変化することを考慮して下さい。 絞りは今回開放です。それは曇天だったこともありますが被写界深度を浅くして背景のボケを優先したためです。



今回の作例は広角レンズの特性であるデフォルメ効果を強調しようと撮影しました。

上から覗くと顔が大きくなりますが体が小さくなり通常拝見しない表情が期待できます。モデルさん側からは不評な場合がありますが撮影者からすると、面白くて撮っちゃうのです。

上を向いていますので目を見開いた状態になりますから綺麗に見えます。しかし、あまりキツイ広角はお勧めしません。大体28mm位が良いのではないでしょうか?

今回の撮影では絞りを開放かその近辺で撮影しております。その訳は背景処理にボケを利用しているのは既に書きましたがピントとボケの比率も重要ですすのでここで研究してみましょう!

パステル調に仕上げたければ開放で目にピントが基本です。100mmのレンズで2mの距離でしたら顔のみにピントが合いその前後はボケる訳です。既に承知と思いますが絞りを開けるか、望遠を使う、接写すると被写界深度は浅くなります。

また観光地などで人物と背景の建物にもピントを合わせたい場合はこの逆で良いわけです。広角レンズで絞り込んで人物から離れて撮影すれば目的通りの仕上がりになるでしょう。

今回の撮影講座ではただ撮影するから「より美しく・・・」をテーマに語ってきましたが、いかがでしたか?モデルさんとの信頼関係がリラックスした表情を産みます。その上に撮影技術でより美しく撮影できるのです。自然の表情を狙うのにはこれが最重要事項です。決して無理やりで強引な撮影状況では良い結果は望めないのです。それは心を開いてこそなのです。



次回は「ポ−トレート第5弾 意図して撮る」(時期未定)で会いましょう。それまで皆様撮影頑張って下さい!