ポートレートは肖像写真のことですが、女性の上半身の写真を呼ぶ場合が多いです。広義には全身でも顔のアップでもポートレートですが、ここでは人物写真として説明していきます。あくまでも基本通りが最高ではありませんので注意してください。「アンバランスのバランス」が存在しますので、個人個人で撮り方を変えても結構です。変化が写真の楽しみでもありますのでいろいろ試してみましょう。
 なお、
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まず、最初にレンズの説明からいたします。レンズは広角から望遠まであることは誰でも承知していることでしょう。では何ミリのレンズを使用すればいいのでしょうか? また何故そのレンズにしなければいけないのでしょうか? 所有するレンズで上手く撮影出来るのだろうか? 等々疑問がおありではないでしょうか。基本中の基本からスタートしましょう。(各メーカーにより差がありますので詳細はメーカーへ)

なおここでは、一般に広く普及しています。 35mm判カメラで説明しますのでご了承ください。


画角
1眼レフの特性にレンズ交換があります。初めて購入すると標準レンズをが付いて販売されていますが、ここで標準レンズ(50mm前後)は何を指して標準なのか?気にならなかったですか?
人間が普段見ている大きさに近いのだそうだ。しかし、多くの方は標準レンズを覗くと「これが普段見ている世界?」と思われるかもしれません。それは人間の視野が左右に広がる広角レンズだからです。ある任意の1点を見つめた時に脳が感知する大きさが標準レンズの大きさなのです。その時に当然見えている画像は実際は見えていても脳に情報を少ししか送っていないからです。しかし、身の回りの情報、特に危険を察知するため広角画面のほとんどが少量の情報を脳に送っています。だから、標準レンズを覗くと実際との違いを感じるのです。

話がどんどんそれてしまうので、軌道修正します。標準レンズの画角は46゜ です。これはフィルム画面に写る被写体の範囲を角度で現したものです。これより広いのが広角レンズで狭くなるのが望遠レンズになります。それでは実際の画角をご覧ください。
28mmレンズ 35mmレンズ
28mmレンズ 35mmレンズ
標準レンズ
カメラ位置を固定して、レンズを交換して撮影したものです。上段が広角レンズです。左の標準レンズからかなりワイドな画面になるのが分ります。一方、下段は望遠レンズになりますが今度は被写体が随分近づいているようになりますね。これがレンズの画角です。またよく見ると広角レンズは周辺部で歪みが生じているのがお分かりでしょう。広角の特徴でこれを使った効果(デフォルメ)などいろいろ考えられます。画角の違いをご理解できたかと思います。
50mm標準レンズ
135mmレンズ 200mmレンズ
135mmレンズ 200mmレンズ

遠近感
レンズを理解して初めて使用レンズの選択ができます。画角の次は遠近感(perspective)です。これは絵画などで用いられている手法ですが、手前が大きく後方ほど小さくなると遠近感を強く感じることです。これもまた作例で説明いたします。画角とは逆に被写体の大きさを同じにしてレンズを変えます。つまり、自分が動くのです。
24mmレンズ 35mmレンズ
24mmレンズ 35mmレンズ
標準レンズ 人物の大きさを同じに(撮影の都合多少差が出ました)するとバック(背景)に注目してください。広角レンズでは海や空まで遠くの風景が小さく写し出されています。レンズが標準から望遠にいくに従って海がすぐそこに写り込みます。
これは広角になればなるほど遠景が小さくなり遠近感が誇張されるのです。また望遠になればなるほど遠景が近く感じられて遠近感がなくなるのです。これは望遠レンズの特徴である「圧縮効果」によるものです。遠近感を持たせたいなら広角レンズを、なくしたいなら望遠レンズを使用します。
ここで被写界深度の関係で広角はピントの幅があり、望遠はピントの幅が狭いのでバックがボケるのも憶えましょう。
50mm標準レンズ
100mmレンズ 200mmレンズ
100mmレンズ 200mmレンズ


光を読む
画角と遠近感を理解しましたら、いよいよ撮影になります。標準レンズでもよろしいのですが、100mm前後のレンズがあると近すぎないし、遠すぎなく被写体(ここでは人物)と会話出来る位がいいでしょう。
撮影は天候次第で変わってしまうものです。もちろん雨でも雪でも撮影しても構わないですが、通常は晴れないし曇りでの撮影になることでしょう。そこでのキーポイントは太陽になります。フィルムに光を感光させるのが写真ですので太陽が全てと言っていいでしょう(夜間や室内は別)。快晴と曇天でも写真の仕上がりは変わります。
それでは、快晴の場合で説明いたします。

順光 逆光 サイド光
順光 逆光 サイド光(反逆光)

ほぼ同じ場所で「光の方向」での違いを撮影しました。順光は太陽に向かっていますから、カメラのオート露出ですとハイライト(最も明るい場所)を測光してしまい、アンダー(露出不足)になり暗くなってしまいがちです。また被写体であるモデルは大変眩しくて表情が険しくなってしまうことが多いです。順光での撮影はカメラの測光より1段から1段半ほど開けて(絞り値を最大よりにするか、速度を遅くする)撮影しないと失敗します。色は原色の発色が素晴らしい利点がありますが、コントラストがきつくなる欠点もあります。特に女性がモデルの場合はシワなどが強調されるので注意が必要です。お手持ちのカメラの機種によって測光の誤差がありますので注意して撮影して下さい。
逆光は字の如く太陽を背にしますのでモデルさんは自然な表情が作りやすくなります。また、顔などはコントラストが小さいため立体感はないのですが影がきつくなく女性などはこちらの写真を好みます。ただし、撮影者からは太陽光がレンズに直接入って「ゴースト」や「ハレーション」の原因になるので注意してください。作例のように木の下などで撮影しますと葉陰などがキラキラ輝くのも逆光ならではです。逆光もピーカンの晴天時にはハイライト部分とシャドウ部分の差が有り過ぎ発色も良くありませんので、レフ板などで補助光を当てます。それは鏡や布や材質は様々なものがありますが、色の付いているものは色反射してモデルに影響しますので気を付けて撮影して下さい。
次がこの中間になりますサイド光です。顔や体の一部分に光を当て立体感を持たせます。ここでは光の当て方のバランスが大切になります。当て過ぎますと顔に影のラインが走ったりしますので、注意が必要です。

ポートレートが上達するにはモデルさんをいかに気分良くさせるかですから、眩しいとかは避けた方が無難かも知れません。またバストアップの写真を撮影するには100mm前後のレンズで楽しい会話などで自然な表情を狙って撮影しましょう。会話はコミュニケーションの基本です。

  今回の撮影のデータ   105mmレンズ使用  ISO 100
順光 1/500 F 4 1/2 逆光 1/125 F 2.8 サイド光 1/125 F 4


露出不足 露出過多 日中シンクロ
露出不足(アンダー) 露出過多(オーバー) 日中シンクロ

今度は最も難しいとされる露出の測光です。現在市販されている1眼レフカメラは完全マニュアル機種はほとんどないと言っていいでしょう。TTLやAE機構を有したカメラがほとんどです。高級種などは「マルチ測光パターン」などと測光の方法もいろいろですが、本来は露出計で測光して撮影が基本で上達の近道です。しかし、安いものではないのでカメラの測光に頼るのが現実的で経済的です。ネガフィルムで撮影しますと、多少の露出不足や過多をプリントの際に修正できますが、ポジフィルムはラチチュード(寛容度)が狭いので1/2絞り程度で暗くなったり明るくなったりするので難しいとされています。上達には数多くの撮影を重ねたデータの集積が必要です。失敗を恐れず撮影データを残し出来ればポジフィルムで挑戦して自分のものにして下さい。その日によって写真の出来が違うのは残念ですから・・。上記の写真は同地点で故意にアンダーとオーバーを表現しました。露出不足は字の如く光量が不足しているのです。AE測光などではハイライト部分を測光してしまい実際より明るいとカメラが判断したため結果的にはシャドウ部分が潰れて暗く表現されるのです。オーバーはその逆でシャドウ部分を測光し過ぎてハイライトが飛んでしまったためです。これを防止するには、18%標準反射板などで画面一杯に測光すると正確になるのですが、これが出来ない場合は無彩色の洋服で代用したりして下さい。手のひらなどで代用も出来ますが、精度にばらつきがでます。
もう1つの方法に「日中シンクロ」があります。ストロボを日中に使用するのです。この場合に気をつけるのはストロボが同調するシャッタースピード(X接点)以下にしないといけません。各機種によりX接点が違いますので、よく取扱説明書をご覧ください。昼間の光はハイライト部分とシャドウ部分では絞りにして3段以上の露出が違います。日中に逆光の場合や木陰にいる人の場合は人物がアンダーになるのを防止するためにストロボで光量を調節するのです。外光(この場合は背景の光)より強い光は不自然になってしまうので、外光より少し弱めにストロボ光を当てます。露出をオーバーに撮るのとは発色が違います。また、シャッタースピードをより早く出来たり、絞り込めたり表現が豊富になります。ストロボの直光は肌に反射のテカリが出来ますので角度やストロボの前にトレーシングペーパーなどを貼って光を和らげたりしましょう。


撮影しましょう!

読んでいただけでは理解は困難です。外に出掛けて撮影しましょう。そして、ご自分が撮った作品をよく見ましょう。天地左右が傾いてませんか?傾けるなら大胆にやって下さい。中途半端はダメです。手足をキチンと入れますか、それとも切りますか?表情はいいですか?露出はどうしますか?など考えて撮影しましたか?

参考までに、シャッタースピードが1/125より遅い場合は三脚に取り付けるのが最初は無難です。ない方はしっかり足を開いて息を吐きながらがブレの防止になります。また絞りを1/2段階ほどアンダーとオーバーを撮影します。これは「段階露光」と言い、失敗を防ぐために用います。ただしポートレートは表情が第一ですので、風景と違い段階露光の際にベストショットが適正露出にならない事があります。


よく観光地で見かけるショットですが、右と左チョット違います。  探してください・・・・解りましたか?

答えは水平線の位置が違うのです。どうして?アングルが違うからです。左はモデルの目線位置で右がローアングルでの撮影です。同じ被写体でもカメラ位置を少しだけ変えるだけで作品が変わるのを理解してください。見慣れた高さから離れてみることは大切ですね。ただしミニスカートの時はチョット・・ 責任を持ちません。

さらにアップになりますが、左の作例の水平線に注目して下さい。首を切っています。これは人の視覚効果で空と海が2つに切断してしまい、その上の首が胴と分離してしまうからです。なるべく顔周辺に水平線などは避けましょう。右は水平線を下にしたため安定感が出ていますが無難な仕上がりになるので、動きなどで表現しましょう。

撮影していますと「何処で撮れば?」が気になるところですが、場所(ロケーション)は身近な場所でも探せばあります。ポートレートは人物が中心になるためバック(背景)処理に注意が必要です。バックがゴチャゴチャしていますと人物が引き立ちませんので、単調な風景をバックにするのが無難になります。開放(最大絞り)で撮影した場合は望遠レンズを使用するとバックがボケて複雑な背景も単調になり、人物を浮き上がれせる効果があります。上記写真も300mm望遠レンズで撮影したものです。逆光で絞りは開放で撮影しました。バックが白一面ですが、実は住宅街の道路上での撮影です。空も道路も区別がつかないほどバック(背景)は飛んで(露出オーバー)いますが人物は適正露出なので透明感が出ている作例です。身近な場所でも大丈夫です。また、ポートレートはヌード撮影ではなく衣装を着ていますので、その色やデザインも写真表現の重要な要素になります。注意しましょう。

35mm判カメラはフレームが長方形なので、たて位置かよこ位置で撮影になります。もちろん斜めもありですが、構図(フレーミング)は被写体をどのように表現するかですから、たてかよこかは重要な訳です。上記の写真はたてとよこで撮影した作例です。「どちらを選択しますか?」それは撮影者自身が決定することです。個人個人の感性で構図を決めましょう。写したいものと写したくないものがあるはずですので、試みてください。重要なのは、何を撮りたいかで変わってきます。感じてください。あなたの心の感性を・・・

今度は広角レンズを使っての作例です。望遠レンズはバック(背景)をぼかしての撮影でしたが、こちら広角レンズは被写界深度の関係でバックにもピントが合います。被写体のモデルと至近距離ですので会話によりリラックスさせましょう。また、ローアングルからは足が長く見え(デフォルメ効果)ますし、会話次第で普段とは違う表情が撮影できたりもします。モデルと撮影者に信頼関係が構築されないと固い表情になり勝ちですので、まずはお試しを。

「簡単なポートレートの撮り方」を文字通り簡単に述べてまいりました。如何だったでしょうか? 簡単ではなかったですか?女性のポートレートに限らず人物撮影はモデルと撮影者相互の理解がなくては成立しません。信頼が裏打ちされて自然の表情が撮れるでしょう。初心者の方はもっと自由に写真を楽しんでください。上級者の方は作品に自分の主張を表現してください。まずは始めましょう!無限の可能性を秘めたカメラを持って・・・・・




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